- そこはある田舎町。一人の男が働いている。彼の名はゴン。
この村で農家をしながら、物語を作っている純朴な男だ。
今日もいつもと同じように、農作業をしている。
- ゴン
- (ふと、作業をやめ)思いついた!
穏やかな朝、落ち着いた夫婦の会話が聞こえてくる。
うちの犬は賢いもんだなシェリー! 毎朝新聞を持ってくるよ。
あらジョン、それぐらいどこの家の犬でもするでしょ。
でも、シェリー。うちは一つも新聞契約してないだろ。
まぁ!
- 間・・・。
- ゴン
- うん、上出来だ・・。
- そして、再び作業に戻る。
と、その田舎町の上空に一人の天使がやってくる。
彼女の名はハル。ちょっとした気まぐれで、一階層下のこの地表まで降りてきた。
上機嫌に空を飛んでいるハル。
- ハル
- るんる、るんる、るん。・・何かおもしろいものないかな?(と、ハル、地上のゴンを見つけ)あれ、あんな所に人がいる。
- そして再び、作業をしている男。
- ゴン
- (場所を移動して)さあ、もう一踏ん張り・・。
- と、再び作業に戻る。
と、ハルが近くにふらふらやってくる。
- ハル
- (ささやく様に)こんにちは・・。
- ゴン
- (ふと、作業をやめ)思いついた!
ある仲のいい男達の会話。
トム!雨だぜ、その傘をさせよ!
ダメだよジョン・・この傘には穴が開いてるんだ。
じゃあ、何でそんな傘を持ってるんだ?
雨なんか降らないと思ったからさ。
!(なるほど)
- ハル
- ・・・・。
- ゴン
- うん、上出来だ・・。
- ハル
- えぇ?
- ゴン、再び作業に戻る。
間・・・。そして!
- ハル
- あの・・。
- ゴン
- 思いついた!
病院にて。
ドクターチャーリー、たすけてください!
どういたしました?ジョン?
どこをさわっても痛むんです!
どういう事です?
肩を触ると痛いし、膝を触ってもイテ!そして、おでこを触っても・・あいたたた・・。
なるほど、指の骨折ですね。
- ハル
- ・・・・。
- ゴン
- うん、・・上出来だ・・。さ、もう少しがんばろうか。(と、作業に戻ろうとしたとき)
- ハル
- さっきから、なにを一人でしゃべってるの?・・って、そっか・・私たち天使は普通の人には見えない・・。
- ゴン
- おまえ、いつの間にそこにいた?
- ハル
- 見えてるんだ、わたし!あなた、視力はいくつ?
- ゴン
- 0.4と4.0。
- ハル
- すごい乱視ね。
- ゴン
- だから、毎日がくらくらさ!
- ハル
- コレは意外な発見、視力がいい人には見えるんだ、私たち天使の姿が・・。
- ゴン
- おじょうさん!
- ハル
- はい?
- ゴン
- よそ者かい?
- ハル
- え・・あ・・うん。
- ゴン
- まあ、ゆっくりしていきな。(と、作業に戻る)
- ハル
- はぁ、・・どうやら、天使だとはばれてないみたいね・・。
- 間・・
- ハル
- ・・ところで、あなたはさっきから何をしゃべっていたの?
- ゴン
- ああ・・聞いていたのか。
- ハル
- うん。
- ゴン
- ・・物語を考えていたのさ。
- ハル
- 物語?
- ゴン
- 待ちながら、物語を考えていたんだ。
- ハル
- 待ちながら?
- ゴン
- 俺の名はゴン。この町でずっと農作業をしている。そしてこんな俺にも愛する人がいる。
- ハル
- へ~。
- ゴン
- 彼女の名はリリ。彼女は今、この町を離れ都会に行って頑張っている。有名なダンサーになるために、毎日毎日、生懸命頑に張っている。
- ハル
- 彼女が帰ってくるのを、待っているの?
- ゴン
- ・・いいや、そういうわけでもない。
- ハル
- どういう事?
- ゴン
- 俺は一生懸命頑張っている彼女が好きだ。だから彼女の夢が叶えばいいと思っている。有名なダンサーになり、この寂れた田舎町の事など忘れ、幸せになればいいと心の底から思っている。
- ハル
- ふうん。
- ゴン
- でも・・もし、万が一、彼女が夢やぶれた時、彼女の今の夢が叶えられなくなった時、きっとこの町に戻ってくるだろう。
- ハル
- うん。
- ゴン
- その時に、彼女が笑顔を作れる様に、おれは物語を考えながら来るべきでないその時を待っている。
- ハル
- 来るべきでないその時を待っているの?
- ゴン
- ああ、そうだ。
- ハル
- ・・その女の人は、きっと幸せね。
- ゴン
- ああ、すごく幸せだ。
- ハル
- ・・戻ってこないといいのにね!
- ゴン
- ああ・・そうだな。
- と、ハル去る。
- ゴン
- ジョンは言った。「夢を見るためには、眠る事だ」と
そして、シェリーは言った。「目覚まし時計をかけわすれちゃだめよ!」
- と、ゴン再び作業に戻る。
- ハル
- あれから、一ヶ月・・。今日も空からゴンの様子を見ているけれど、まだリリは帰ってきていないみたいだ。
- ゴン
- (作業の手を止め)思いついた!
あるアフリカ人とアラスカ人の友達の会話・・
おい、サンボ~・・・
- と、ゴンの物語がフェードアウトしていく・・そして・・
- ゴン
- リリはやっぱり幸せだ・・。
- ハルは今日も上機嫌に空を飛んでいく。
- 完