雪山。
吹雪の音。
……ちょちょ。
ん?
あれ……ネッシーじゃない?
(笑って)ネッシー?
ほらほら、あの湖のあそこ。……ちょっと一見、島みたいに見えるけど。
……あ。
ネッシーだよなあ。
……ネッシーだ。
その、ここがネス湖ではないけどさあ。
(興奮して)ネッシーだよ!ネス湖とか関係ないよ、えー!
やばいよなあ!ちょっと、カメラカメラ!
ああ!(取り出す)
これちょっと、とんでもないスクープ写真なんじゃないの?
フラッシュ炊いたほうがいいかなあ。……ちょっと、早く貸せよ。
……あれさあ。
え?
雪男じゃない?こっちの茂み。
……ああ。
……何か一見、さきもりみたいに見えるけど。
雪男だ。
だよねえ。
(興奮して)あのたたずまいは、間違いなくそうだよ。ってことはこれ、2匹いんの!?
未確認生物が!
やっベー!何この状況。(女に)カメラカメラ。
ああ。
(うれしそうに)どっちから撮ろう。
早く撮りなよ!
……ていうか、お前これ、残り、1枚しかないじゃん。
ああ!
代えのフィルムは?
ない。
お前……!
どうしよう……。
何やってんだよ!なんで残しとかないんだよ!
しょうがないじゃん!そんな2匹も同時にいると思わないし。
っていうかそりゃ、1匹すらいるとは思わないけど。ってことはこれ、どっちか選ばなきゃいけないの?
ってことだよねえ。
えー、(考えて)何この選択。
とりあえず、ここはやっぱ、雪男じゃない? 
いや、ネッシーだろう。
マジで?
何かこう、ビジュアル的なインパクトで。
だけど、雪男も捨てがたくない?
いやだからそりゃ捨てがたいけど、とりあえずどっちか選ばないといけないから。
あー……。
片方は捨てなきゃいけないから。もうだからここは、身を切る思いで。
(思いついて)これは?ロングでとって、2匹同時にいれる。
あー……。
こう、ネッシーと雪男を、ワンショットで。夢の競演!
いや……遠くない?
ちょっと遠いけど。
これ豆粒みたいになるだろ。やっぱどっちかに絞っていかないと。
(見て)だけどほら!雪男が、湖の方に向かって、歩き始めた。
おお!
……ほらほら、近づいてんじゃん。
歩いてる歩いてる。その調子だ!
もっと近づけ!ワンショットに収まれ!
(見て)だけど、なんかだんだんネッシー、微妙に遠ざかってない?
ああ!
こうほら、なんか雪男から逃げるように……。
何で?
おい、動くなよ!止まれ!
止まれ!
ネッシー!
止まった!
これでお前、雪男が近づけば!……(見て)雪男なんで座ってんだよ!
もう!
なんでくつろいでんだよ!
雪男!
立てよ!歩けよ!近づけよもっと!
(見て)っていうか、なんかだんだんネッシー、沈んできたよ。
マジで?
ほら!
いやだけど、だんだん雪男が立ち上がりつつあるんだよ。
だけど、沈むって!
立ち上がった!早く歩け!ネッシーと距離を縮めろ!
沈ーずーむー!
あと10メートル!7メートル!
早く!やばいって!
だから止まんなよ!
END