- 男
- 「ラジオミュージカル」
- 女
- おお。
- (イントロが始まる)
- 女
- …え?ああ、始まってる。てか、拍子木から ♪ディケドットまでが長い。交響曲始まりそう。
- 男
- 絶対いけるよ、これ。新しいもん。まだ誰もやってないもん。
- 女
- ああ…。
- 男
- 踊りなさい。踊りなさい、あなた。
- 女
- 意味ないでしょ。
- 男
- 伝わるよ。そこが目玉なんだから。
- 女
- ええ?
- 男
- 次、♪ズンドコドッ、はい、のとこだからね。
- 女
- ええ? ♪ズンドコドッ、はい。
- 男
- ♪恋の~。…あ、間違えた。
- 女
- イントロ。あまりに長い。
- 男
- ♪恋の~(上手に歌に入れず)あ。…歌この人歌ってるから、俺、朗読するわ。「台詞ひとつ、忘れもしやしない」(少し違う)
- 女
- ♪ズンドコドッ、はい。ま、台詞見ながら言えますからね。私も朗読しよ。
- 男
- 「誰の筋書き」
- 二人
- 「花舞台」
- 女
- …ああ!(と、何かに火がつく。)見えた!「行く先の影は見えない」!
- 男
- ♪ズンドコドッ、はい。あの、僕、朗読係だから。
- 女
- (それを聞かずに)その向こうに広がる、花舞台!…そういうことだったのか、やっと分かった!
- 男
- ……。僕は…もう、何も言えなかったわけで…。
- 女
- ああ、もっと練習したい。時間がない、もっと練習したい!
- 男
- 「稽古不足を」
- 女
- へ?
- 男
- 「幕は待たない」
- 女
- はい!
- 二人
- ♪恋はいつでも初舞台~。
- ブチッ。(と演奏を止める)
- 男
- ああ!
- 女
- 演奏長いんで。ズンドコから再開。
- 男
- ああ、はい…。
- 女
- ♪ズンドコドッ、はい。
- 男
- ♪恋の~。あ、また間違えた。
- 女
- 集中が足りないんですよ!
- 男
- あ、はい、すみません。
- 女
- ああ、でもこれ、絶対いけるわ。私の中でめっちゃ広がってるもん。そう!まさに、「たぎる思い押さえられない」!
- 男
- ♪ズンドコドッ、はい。 あの、僕が朗読なんで…。
- 女
- 踊ればいいでしょ!
- 二人
- ♪花舞台~。
- 女
- 踊りなさいよ、あなたが!
- 男
- あの…でもね、踊っても見えないから、意味ないと思うんだ。
- 男
- ♪ズンドコドッ、はい。
- 女
- バカー!(平手打ちの音)
- 男
- あ…!
- 女
- 意味のないものなんてない!もともと踊りなんか見えたって意味あるかどうか微妙なんだから!
- 男
- あ、じゃあ、はい。タップします。音出るからタップします。
- (タップダンスの音始まる)
- 女
- よーし。 ♪こなしきれない、涙と笑い~。歌え、踊れ!
- 男
- はい!
- 二人
- ♪恋はいつでも初舞台~。
- 男
- あ、これ、間奏切った方が…。
- (と思ったが、すぐにサビの繰り返しがくる。)
- 女
- 止めちゃ駄目!
- 男
- ああ、もう? ♪男と
- 女
- ♪女~
- 男
- ♪あやつり
- 女
- ♪つられ~
- 二人
- ♪対のあげはの~
- 男
- オスあげは~ ♪誘い
- 女
- メスあげは~ ♪誘われ~ わ、何かこれちょっとやらしい。
- 二人
- ♪心はらはら~(女は感極まって涙声になってる。)
- 男
- こら、カーテンコールまで泣くんじゃない。
- 二人
- ♪恋はいつでも初舞台~。
- (歌終わる。)
- 女
- (遠い声で)本当に、、本当に…ありがとうございました!
- 男
- はあ…はあ…。いかがだったでしょうか?俺達のこの全く新しい作品世界にかける想い。上演希望される業界関係者の方、アクセスはこちらまで。
- 女
- あ、これ、ラジオなんで字幕出ないですよ。
- 男
- ああ…。
- おわり