- 雪だ
ふわふわと、空からやってくる
- 女の子
- 雪や!雪や、雪や、雪や。
- うれしくてぴょんぴょんはねまわる
- 女の子
- お空からぁー、ふわふわー、こんにちわや。
- 父上
- うん。空から、はるばるやってきてるねん。
- 女の子
- 遠い?お空からここまでは遠い?
- 父上
- ううーん、そうやな、どのくらいかな。
- 女の子
- なんキロメートル?
- 父上
- キロメートル?難しいこと聞くようになったな。
- 女の子
- 数かぞえられる。いーち、にーい、さーん、しーぃ。
- 父上
- 足し算は?出来るようになった?
- 女の子
- いちがふたつ。
- 父上
- うん、いちがふたつあったら、2になるってことやな。
- 女の子
- それ。
- 父上
- 今年から小学校か?
- 女の子
- ランドセル買うの。赤いの。リンゴアメみたいに赤いの。
- 父上
- 春になったらやろ。
- 女の子
- うん。あ!
- 女の子の小さな手のひらに、ひとつ、小さな雪が降りてくる
- 女の子
- 雪、ほら、雪つかんだ。
- 父上
- どれどれ?
- 女の子
- あー…なくなった…
- 父上
- しょうがないな。熔けるから、雪は。
- 女の子
- さっきまであったのにぃ。あ!また雪つかんだ!あー、溶けてもうた。
- 父上
- 手のひらの体温で、なくなってしまうねん。
- 女の子
- つまらん。
- 父上
- ほら。
- 父上の手のひらには、熔けずにどんどん雪が積もる
- 女の子
- うわー。すごーい。雪いっぱいや。私も、雪手いっぱいにしたい。
- 父上
- うーん、それは無理やねん。
- 女の子
- なんで?
- 父上
- だって、普通はな体温で雪が溶けてしまうから。
- 女の子
- むー。じゃあ、地面は?体温ないからつもる?
- 父上
- うーん、つもらんな。
- 女の子
- なんで?もっと降ったらつもる?
- 父上
- 大阪じゃなぁ、つもらんなぁ。北海道行かなんと。
- 女の子
- ちぇー、やわ。あ…雪、少なくなってきた。
- 父上
- ほんまや…
- 女の子
- みじかい。ちょっとや。
- 父上
- ほんまやな。
- 女の子
- 雪の日やなくて、なんでおひさんの日やったらあかんの?
- 父上
- だって、ほら、お空からどうやってここまでくる?
- 女の子
- あー…ほんまやぁ…
- 父上
- ああ、もうすぐ止むなぁ。
- 女の子
- あんな、あんな、ゴールデンにな、兄ちゃんがな、ゆうえすじゃいにつれていってくれてな、ほんでな、夏になプールもいってな、ほんでな、どらえもん見てな、ほんでな、お母さんにカレーつくってあげてな、そしたらな、お母さん笑ってな、ほんでな、兄ちゃんがな、
- 父上
- 十数えられるか?
- 女の子
- うん。できるよ、私十数えられるよ。
- 父上
- そしたら目つむって数えてみ。
- 女の子
- うん。いくで。いーち、にーい、さーん、しーぃ、ごーぉ、ろーく、なーな、はーち、きゅーぅ、じゅーう。数えたー。
- と、女の子が目を開けると、もう雪は止んでいた
- 女の子
- あー…雪、やんでもた…あー…おひさんでてきた。
- 女の子、お空にむかって言ってみた
- 女の子
- またなぁー、雪ふったらなぁー、お空からなぁ、ここまで来てなー。
- 父上は、雪にのって女の子に会いにくるのだ
- おしまい