男の部屋。深夜。テレビの音が流れている。
じゃお前このソファ使って寝ていいから。
うん。ありがとう。
でもなええかげんさ。男と別れたら俺とこ来るん、やめてくれる?
え迷惑?
いやいやそうじゃないけどさあ。
来たくなるんよ。あんたの顔見たくなるの。
まええけど。さ明日も早いんやし寝よ寝よ。テレビ消すで。(テレビを消す)
うん。おやすみ。
おやすみい(電気も消す)……て、ちょっとちょっとなに。
え?
なんでお前俺の布団入ってきてんの?
えあかん?
いやいやいやいや。あかんていうかさ。……え、いやあれなにそういうことなんか?っていうかさ……。え?
あのね……あのさあ。
え。なになに。
私な実はな……。
うん……ごくり(唾を飲む)
いや自分でもどうかと思うねんけどな。
うん。
最近な一人で寝れんのよ。
は?
誰かが横におってくれなあかんのよ。
ほお。
それもな男の人やないとあかんみたいなんよ。
マジで。
うん。そういう体になってもうたみたいやねん。
どんな体や、それ。
というわけで、ちょっと。はいはいはいはい(と布団に入っていく)
なになになに。ちょっともう。ああー(入ってこられた)
今日だけ。嫌?
嫌ちゃうけどさ。
あー……うん眠れそう。
そうなん?……(ため息)でもさどうかと思うで。そういうの。
うん。
なんていうか不幸な感じするわ。
分かってる。なんとかせなあかんと思ってるよ。
……男依存症?
わっ、最低やなその響き。ちゃうで、ちゃうちゃう。腕枕がないと寝らんだけやもん。
腕枕依存症?
いやや!そんなん。
でも、そうなんやろ。
……ああ、ふしだらな女になってしもうた。
うん……あのさ俺も一応男やからさ。ええの?
なにが?
そんな安心してええの?
うん。安心できるよ。
そう。……なんですか、これは?
え?
やっぱりあれですか。愛ですか?
えなに?
ちゃうの?
私があんたに?
そう。
あーいーかあ。愛。愛情?
うん。
(照れて)クワーッ。
なんやクワーッて。
ないな。
あないんや。
うん。ないない。
えなに。じゃあこれどういう状況?
えーひとやすみ?ドライブイン?休憩所?オアシス!うん。
へえオアシス。
うん。でもな。
うん。
愛以外はねあるよ。あんたに。全部ある。
あそう。愛以外はね。あるんや。
今日だけ。
うん。
あんたかて眠れへん夜くらいあるでしょ。
え?
ないの?
うん、ない。
そう。幸せなんやね。私と違って。
そうなんかな。不幸ではないんかもしれんな。
あ……眠くなってきた。
うん。ええで。寝て。
(眠りに落ちながら)うん。
……あのさ。
(ほとんど寝ていて)ん?
……俺はさ、あるんよ。全部。
(寝ている)
なあ聞いてる?