- 和夫と直美は散歩中 和夫はそこらにある家の表札を見ているようだ
- 和夫
- 吉田。吉田はいたな。高校の同級生にいた。小堀。小堀はおらんな。坂崎。坂崎?
あーなんかいたような。
- 直美
- なにしてるの。
- 和夫
- 表札みてさそーゆう苗字の知り合いいたか思い出してるねん。
- 直美
- (ため息)・・・どっかいこうや。
- 和夫
- お金がないやろ。
- 直美
- どっかいこ。
- 和夫
- おまえな。これからはお金をかけずに遊ぶ時代やぞ。
- 直美
- 誰が決めたんよ。
- 和夫
- こうやってな「あーこんな名前の人いたかな」って考えたらさ、その当時のこととかいろいろ思い出して、楽しいやん
- 直美
- せっかく休みあわしたのに。
- 和夫
- お前もやるか。
- 直美
- 植物園でいいからいこ。
- 和夫
- いやや。お前もやれ競争するか。
- 直美
- なによ競争って。
- 和夫
- 家に着くまでにどっちが知り合いの数多いか。
- 直美
- いや。
- 和夫
- いくでうそついたらあかんよ。よーい、スタート。
- 直美
- ・・・。
- 和夫
- 高橋。これはいるね。高橋いた?
- 直美
- いた。
- 和夫
- 一対一か。矢田。矢田・・・いたかな・・・。
- 直美
- いた。
- 和夫
- 矢田?
- 直美
- 高校のバレー部
- 和夫
- ・・・怒ってる?
- 直美
- ぜんぜん。
- 和夫
- 二対一か。一之瀬。これはいないな。
- 直美
- いた。
- 和夫
- うそ。
- 直美
- 高校のテニス部。
- 和夫
- お前バレー部やろ。
- 直美
- ちょっとだけテニス部にもいたの。
- 和夫
- ・・・三島。三島は・・・いたな。
- 直美
- だれよ。
- 和夫
- なにが?
- 直美
- 三島さん。
- 和夫
- いいやん。
- 直美
- 怒らへんから。
- 和夫
- 違うって。
- 直美
- いいやん。昔のことやろ。
- 和夫
- お前とそういう話するのいやなの。
- 直美
- なによそれ。
- 和夫
- はい。続けるよ。一万田。一万田?すごいなこれはおらんな。
- 直美
- いた。
- 和夫
- うそつけ。
- 直美
- 鹿児島の人。
- 和夫
- 適当なこというなよ。
- 直美
- めっちゃ背が高かった。
- 和夫
- はいうそ。
- 直美
- 焼酎カポカポ飲んでた。
その頃私まだ学生やったから真似して飲んでよく漬れてた。
- 和夫
- ・・・うそ。
- 直美
- 人生ってなにがどうなるかわからへんよな。
- 和夫
- 露骨な独り言はやめてくれ。
- 直美
- ごめんな。私あんたと結婚したいと思ってるよ。
- 和夫
- え?
- 直美
- でも昔のことはお互いきかんとこ。
- 和夫
- ・・・うん。
- 直美
- さて問題です。私は何回うそをついたでしょうか?
- 和夫
- ・・・ぜんぜんわかりません。