- 駅がドッと人をはきだす フェンスごしにせんろが見える道 そのでんしんばしらのヨコに消えかけの外灯。
- 少女
- パッパッパッパッパッー。
- ゾロゾロと人がとおりすぎて誰も少女を気に止めない
- 少女
- パッパッパッパッパッパッパッー。
- 誰も気にとめない
- 少女
- パッパッパッとけいとうとうが泣く。パッパッパッと命をけずる。パッパッパー。
- 男が1人足をとめた。
- 男
- ああ、もうあかんな、このけいこうとう。
- 少女
- パッパッパと命をけずる。
- 男
- あたらしいの、もってきてよかった。ちょっとそこどいてくれるか?おっちゃんがあたらしいのんにしたから。な?
- 少女
- 頭の上で視界をさえぎる。光、ヤミ、光、ヤミ、光、ヤミ。
- 男
- ちょっとー、おっちゃん次のそうじもまだあるんやから。はよしてえな・・・。
- 少女
- うすよごれて、きいろくなってアカのついたけいこうとう。
- 男
- やろ?だからはやくこのまっしろいのんととりかえたるねん。
- 少女
- パッパッパッパッー、光、ヤミ、光、ヤミ、光、ヤミ、消えたり、ついたり、消えたり、ついたり。
- 男
- もうだいぶ使ったからな。寿命がきたんやろ。
- 少女
- ちょっと、パッパッしたらすぐかえるの?
- 男
- え?
- 少女
- 光、ヤミ、光、まだヤンでないのに?
- 男
- ・・・うん。ほら夜中とか明るい方がええやろ?
- 少女
- 古くなったら女房はすぐとりかえるの?
- 男
- 誰に聞いたんや、そんなこと。
- 少女
- 古くなったオヤジもクビにできるの?
- 男
- う・・・。
- 少女
- それはあたってるの?
- 男
- うーん、ちょっとな・・・。
- 少女
- まだまだ働けるのにな。このけいこうとうと一緒。
- 男
- ちょっとガタきてるな。
- 少女
- でもまだおわってない。おわってないのに、すぐあたらしいのと、とりかえる?まだこのけいこうとう生きてるのに?
- 男
- だからな・・・。
- 少女
- あとちょっとのこと。パッパッパッー。けいこうとうが泣く。もうすぐ命をおわらす。その最後、見とどけてからとりかえたとして、そんなにモンダイ?
- ガタン ガタンーとでんしゃがとおりすぎた
- 少女、男
- パッパッパッーとけいこうとうがなく。パッパッパッーと命をけずる。
- 少女と男はけいこうとうをみあげ まるで歌っているよう 何だか息とうごう
- 少女
- 光、ヤミ、光、ヤミ 世界がくぎられてるみたい。
- 男
- そうや!おれだってー、さいごまで、もっと働けたんやぞー。それを、なんや、こんなところにまわしやがって・・。
- 少女
- あ!!
- 男
- うん?
- 少女
- いややねん。
- 少女が指さしたけいこうとうを男がみると
- 少女
- そのけいこうとうは、もうすぐ命をおわらす。この世界をくぎって最後の叫びのように一度だけパッパッパッと泣いた。ご苦労サマ。
- 男
- 光、闇、光、ヤミ、か・・・。
- 少女
- 最後までみとってくれてありがとう。じゃましてごめんなさい。とりかえてください。じゃあね。古くなったオヤジ。
- 男 少し笑って
- 男
- どっち方面へ帰るんや?暗いから気つけや
- 少女
- 光、闇、光、闇、光、闇」・・・・・。
- と 行進曲のように声をかけて歩いていく
- 男
- よっと・・・。
- 男
- 全然ドラマチックやなかったもんな。
- 古いけいこうとうをとると
- 男
- うわあ、よごれてるなあ・・・ゴクローサン。
- それはけいこうとうに言ったのか 自分に言ったのか 駅はあいかわらず人をはきだしつづけている
- 了