- “STORY FOR TWO”番組の始まりを告げる二人のナレーターの声に重なって聞こえてくる、金属的な摩擦音
グギュッ…グギュギュッ…
人の呼吸のようにも聞こえる「それ」が急激に高まって…
- F
- 『聞こえるか
僕の声が…
聞こえるか…』
- H
- え
- F
- 『聞こえてるね
そのまま 耳を閉じないで
クク とびきり愉快な話を聞かせてやるからさ』
- H
- え…?ちょっと、あの…ええっ!?
ストップ!
ストーップ!
- H
- Fさん!Fさん!
- F
- ……んあ。
- H
- どうしたんです!?
大丈夫ですか!?
- F
- …何が?
- H
- 何がって…今、急に訳わからんこと…。
- F
- 誰が?…俺!?
- H
- 番組中やのに。
- F
- つっ、頭…。
- H
- ほんま大丈夫ですか?
- F
- ぐっ…うおっ…あああっ…大丈夫。
- H
- いや、大丈夫ちゃいますよ。
なんか、飲みます?
- F
- あ、じゃあコーヒー…何やろ、またや。
気色悪いなぁ…こないだから聞こえるねん、聞こえるとな、とんでしまうねん、頭。
- H
- 話とんでますやん、落ち着いてください、はい。
- F
- ああ、ありがと…うえっ!
何これ!?
- H
- 何って、水…に砂糖とクリープ入れた…風変わりな飲み物。
- F
- なんで水にそんなもん入れんねん!
- H
- 自分で入れたんやないですか。
- F
- コーヒーって言うたやろ。
- H
- 無かったんです。
で?何やったんです今の?
変な声出して。変な事しゃべって。
- F
- …わからへん。
最近、時々。部屋に一人でおるやろ、耳元で聞こえるねん、息する音。
一人やで?一人なのに。
- H
- 病院、行ったほうがいいですよ。
- F
- 病院?
- H
- 疲れてはるんですよ。
診てもらった方が…腰とか…胃とか…。
- F
- 頭?
…待って、俺は狂ってない…俺はー!狂ってなーい!
- H
- いややぁぁっっ!
- F
- ま、それは冗談やけど。
ていうか、そうやったらええんやけど。
- H
- …え?
- F
- 霊感、強い方?
- H
- いえ。
- F
- ふぅん…。
- H
- …いやあああっっ!
- F
- まだ、何も。
- H
- 言うてるんと同じです!
やめてください、苦手なんです、そういう…ジョンジーな話。
- F
- ジュンジー?
- H
- 稲川、伊藤、高田。
- F
- 最後のは違うやろ
- H
- 駄目なんです怖い話!
- F
- 知り合いに、やっぱりDJやってる…やってた奴がおって。
昔…そん時は俺、笑っててんけど…聞こえる、言うとった…音。
- H
- …息する音。
- F
- ん。でな、おかしな事ブツブツしゃべるようになりだした。
- H
- 『聞こえるか、僕の声が聞こえるか』
- F
- いややぁぁっっ!
- H
- アンタやろ!話してんの。
- F
- うぐっうぐっ。
- H
- 泣くな鬱陶しい!
- F
- 場を明るくする為のユーモアやん。
で、そいつはな、逆ラジオジャックされたって。
- H
- 逆ラジオジャック?
- F
- 普通、ラジオジャックっていうのは…。
- H
- ラジオを、ジャックする。
- F
- つまり逆ラジオジャックっていうのは…。
- H
- ジャックをラジオする?
場を明るくするためのユーモアですから。
- F
- ラジオにのっとられる…違うな、ラジオの向こうに…とり憑かれる。
- H
- …ラジオの向こう。
- F
- …リスナーや。
- H
- ……。
- F
- テレビとか?ラジオとか?
番組に向かって突っ込むやん?
んー、一人ん時に気がついたら話しかけたり。
- H
- そんなん。
- F
- 相槌うってたり。
- H
- あ、それは、まあ。
- F
- やろ?そういう、何?
そういう行き場のない声?
想いがこう、オリみたいに霧みたいに溜まるのだ。
- H
- のだって言われても。
- F
- そいつ東京出身やから。
しかも俺らのコレ、人気番組なのだ。
- H
- バカボンのパパみたいなってますよ。
- F
- 人気番組いう事は…ヘビーリスナーがいるっていう…な。
- H
- うう…。
- F
- そのヘビーな想いにな、とり憑かれる…ジャックされるっていう…な。
- H
- …やっぱり病院行った方が。
- F
- かな?
- H
- ノイローゼですよ完全に。
- F
- やな。そいつも今、入ってる。病院。
- H
- 疲れてる、疲れてる(笑)
- F
- うん。疲れてる、疲れてる(笑)
- H
- ストレス、ストレス(笑)
- F
- うん。ストレス、ストレ…あ。
- H
- え。
- F
- いや。
- H
- まさか。
- F
- いやいや(笑)
- H
- ちょっともう、ほんま…あれ?
- F
- …。
- H
- いや。いやいや(笑)
- 不吉な呼吸音が
次第に大きくなり
何かを飲み込むような音となる
グギュギュギュウッ!!
- H・F
- 『聞こえるか?
僕の声が…聞こえるか?(笑)
OK、じゃあ僕の話も聞いてもらおうか…』
- 笑い声高まって…
「STORY FOR TWO」番組終わりの挨拶
その最後のジングルの向こう側に、
あの音が、
聞こえた
- 了