学生時代、達川(たつかわ)は恵美(めぐみ)にフラれた。でもクラスメートとして付き合い卒業。そして10年後、2人は大学の近くの喫茶店で再会する。
(俺のナレーション)
卒業して10年ぶりの初めての同窓会。俺は出席の返事を出しながら行かなかった。そして先日、クラスの住所録が届いた。
(間)
電話の呼び出し音「プープープープープー」(5回呼ぶ)
留守番テープ「ただいま留守にしておりますピッと鳴りましたら」
(一般的な留守番テープ本人が吹き込んだものではない)
電話を切る音「ガチャ」
俺「いないかー」
(間)
(俺のナレーション)
それから俺は大学まで歩いた。街並みはすっかり変わってしまっていた。
坂道を上がり、裏門から入った。すべて新しい校舎に建て替えられ、昔の面影はどこにもなかった。俺たちの頃とは違う髪型の、違う色の、違う服装の学生ばかりだった。「もう来るところじゃないな」。何故かそう思った。正門から出て駅のほうへ歩いた。
(間)
電話の呼び出し音「プープープープー」(4回呼ぶ)
彼女
「ハイ、もしもし」(瞬間間)「もしもし」
「あっ俺」
彼女
「はっ」(誰かわからない)
「恵美ちゃんでしょ」
彼女
「ハイ」(誰だろうという言い回しで)
「わかんないの冷たいなぁ」
彼女
「えぇ達川君?」(「えぇ」をひょっとしたらという声で)
「そうよ達川君よ」(「そうよ」を強調口調で)
彼女
「どうして来なかったのみんな待ってたのよ」
「行きたくてもいけねぇのが渡世人の辛ぇところよ」
彼女
「何まだ寅さんやってるの変んないなぁ‥‥‥(「何」は小さく軽く)(間)ユキちゃん覚えてる?達川君のこと好きだった会いたかったみたいよ」
「あぁユキちゃんかぁなつかしいなぁ」
彼女
「ねぇねぇそれからねみんなもびっくりしたんだけど(瞬間間)スゴイ話があるのよ」
「何?」(次の言葉を期待しながら」
彼女
「タケダ君とレイちゃんていたでしょう」
「あっあのシェイクスピア気違いの?」
彼女
「そう今は故郷(ふるさと)に帰って家の仕事継いで電器屋さんしてるらしいんだけど」
「あいつ秋田だったよな」
彼女
「ほら誰が誰を好きだったってそんな話になるでしょう(瞬間間)タケダ君はレイちゃんが好きだったんだよねってユキちゃんがゆったの」
「うん」(次の言葉を期待しながら)
彼女
「そしたらレイちゃん(間)私も好きだったのよって」
「へぇー」(驚き)
彼女
「じゃぁ結婚してたら今頃電器屋の奥さんになってるんだってあたし思わずゆっちゃったのよ(瞬間間)そのあとシーんとしちゃって(間)終わってからみんな久しぶりに感動というものが心の中で甦ったなぁとかゆっちゃってその話で持ちきりだったのよ」
「でタケダはなんて言ったの?」
彼女
「無言(間)ただどうしてその時にゆってくれなかったのって感じで(瞬間間)呆気にとられてボケーとしてた」
「そぅやっぱり行けばよかったなぁ」
彼女
「そうよゆっくり話もできたのに(間)今どこにいるの?」
「大学の近く」
彼女
「出てきてるの?(驚いて)(瞬間間)いつ帰るの?」
「わからねぇ(間)よかったらちょっとだけでも会えないかな渡したい物もあるんだけど」
彼女
「うん会いたい(是非ともという感じ)どこで?」
「学校の道沿いにシネマハウスって喫茶店があっただろう」
彼女
「あそこまだあるよ」
「本当ぉ?(瞬間間)30分ぐらいでゆけるからそこで待ってて」
彼女
「オーケィ」
電話の切れる音「ガチャ」
(間)
(喫茶店シネマハウス)
エデンの東か風と共に去りぬのテーマかカサブランカのASTIMEGOESBYかが流れている)……………BGM低くなって
彼女
「よく来たわねぇ授業が休講になると(瞬間間)あの時のままねこのお店(壁とか天井を見渡しながらしみじみと)(瞬間間)映画の話ばかりしてたわね(間)卒業してから一度も連絡くれないしみんなに聞いても知らないってゆうし住所録には電話番号書いてないし」
「だって電話なんかないもん」
彼女
「手紙出したのよ届いた?」
「いつ?(瞬間間)こないだから旅に出てるから」
彼女
「どこまでゆくの」
「足の向くまま気の向くまま(瞬間間)いつもの気ままな旅よ(笑)
彼女
「またーっ寅さんみたいなことゆうんだから(笑)でもいいなぁ(瞬間間)いっしょにゆきたいなぁ(想いめぐらすように)(間)ねぇ10年の間どうしていたのよ」
「俺かぁ恋をしていたのよ」
彼女
「もう寅さんはいいってゆってるでしょ」(笑)
「本当だよ恋をしていたのよ恵美ちゃんに」
彼女
「ありがとうそんなことゆってくれるの達川君だけよ」(ゆっくりやさしく) (間)
「今はやりの夫婦別姓で暮らしてるの?」
彼女
「どうしてそんなこと聞くの?」
「住所録の名前変わってないもん」
彼女
(瞬間間)「結婚はしなかったの」(ちょっと寂しそうに)
(瞬間間)「そぅ」(ちょっと静かなでも嬉しそうな声で)
彼女
(瞬間間)「達川君は結婚してるんでしょう」
「俺はずぅーと独身(瞬間間)あっちょっと遅いけどこれ誕生日プレゼント」
彼女
「えぇっあたしの誕生日覚えてるの?」(驚いて)
「忘れるわけないって(静かな口調で)だってずぅーと好きだもん」
彼女
(間)「なあにこれ」
「あの時に2人で行こうと言って約束したけど行けなかったちひろ美術館(瞬間間)もう恵美ちゃんは忘れてるだろうけど(間)絵本」(静かな口調で)
BGM圧倒的に盛り上がって…………………
end