- (お風呂の中。湯船のお湯の音とか、洗面器の音とかが、聞こえる。振り向いた時のお湯の音。ドアを開ける音。など。)
- 彼女独り言
- ふ?っっっ…ほんま極楽、あぁぁぁ?体中がとけていく(ブクブクブク)会社にも銭湯とかあったらええねんなぁ。そしたら少々腹立ってても、ひとっ風呂浴びて気分なおして仕事が出来るってなもんやのに…ふぁぁぁ…あかんわ、風呂なんか入ってたら仕事する気なくなるわ。……、さっき、ちょっと言いすぎたかなぁ。そーや、家帰って顔見る前に、まずお風呂入ったらええねんな。そしたら、わざわざ愚痴ったあげくに八つ当たりして、こうして反省することもないわけやんか。せや、玄関入る前にお風呂があったらええねん、そらもうええ声で「ただいま」、…玄関の前のお風呂てどんなんやねん。……怒ってるかな…(浴室のドアをちょっと開けて)ねぇー!
- 男
- はぁ??なにぃ??(部屋の奥からいたってのんびりした返事)
- 彼女
- …なんもないー浴室のドアをしめる
- 男
- (なんやねん。)
- 彼女
- よかった。…のんきな人で。…あ、わかった!帰りに銭湯寄ってきたらええねんな。そらもう晴れ晴れした声で「ただいま」、…あかん、一人だけお風呂済ませてきたら、気分悪いわな、「部屋に風呂あんのに不経済や」とか言いそうやし、あ、共同生活って大変や(ブクブクブク)浴室の外から声
- 男
- なぁ?。
- 女
- え?…何?
- 男
- ビール、先飲んでるで。
- 女
- ええー、…ええよ。
- 男
- (笑)機嫌なおったんか?
- 女
- …ん?んーー(笑)なあ、(浴室のドアをちょっと開けて)さっきゴメン。悪かった。反省した。
- 男
- ホンマか?
- 女
- うん、ホンマ。
- 男
- 風呂とビールのないとこでは、おまえとは暮らされへんな。
- 彼女
- …うん、そうかもしれへん。
- 男
- (笑)冷えるで。
- 彼女
- うん。
- 浴室のドアをしめる。
- 男
- (ドアの向こうから声)グラス冷やしといたるわ。
- 彼女
- ありがとう。…(独り言)ええとこあるやんか。
- 間
- 彼女
- 結婚しようかな。…とか、思ったりして。(笑)さっき共同生活は大変やて、思ってたくせに、私は。単純か。(笑)
- 彼女
- 浴室の外から声
- 男
- なぁ?。
- 彼女
- わぁ!…びくりした。何?
- 男
- 開けるで。(浴室のドアをちょっと開ける)
- 彼女
- 何?
- 男
- …なぁ、…結婚しよっか。
- 彼女
- え?…な、なんで?
- 男
- なんか、チャップンチャップンいう音聞いてたら、それもええかなーって。
- 彼女
- なによそれ。ビールまわってんちゃう?
- 男
- いや、まだ一杯目やで。今日、満月か?
- 彼女
- さぁ、なんで?
- 男
- 満月の夜は、思いきったことするヤツ多いらしいから。
- 彼女
- なんじゃそれ、…それ、…また、今度考えよ。
- 男
- そやな、今度にしよ。…はよ、あがって一緒にビール飲もうぜ。
- 浴室のドアをしめる
- 彼女
- …はあー…びっくりした。…(ブクブクブク)…フフフフフフ(笑)アカン、のぼせる。湯船からあがる。
- 終