- (小春日和の昼下がり。
街を見下ろす丘の上の神社。
鳥が鳴いている。
木綿子がならす鈴の音、柏手2回)
- 木綿子
- 「県大会いけますように…学年末試験、助けてください…ジョニーがかわいい子猫を産みますように…集平たちが今年こそ一勝できますように…………おばあちゃんが早く元気になりますように………集平と…ずっと一緒にいられますように…」
- (集平、木綿子の姿をしばらく見た後、柏手2回)
- 集平
- 「…木綿子と…」
- (集平、鈴を何度もならす。鳥の声。二人ゆっくり歩きながら)
- 木綿子
- 「もう、集平はー。ふざけてばっかりなんやから」
- 集平
- 「長かったなあ。何、祈りよったん?」
- 木綿子
- 「うん?いっぱい。集平は?ちゃんとお祈りした?」
- 集平
- 「まあな」
- 木綿子
- 「真面目に手合わさんと聞いてもらわれへんよ
- 集平
- 「木綿子は、しょうもないことたのんだんやろ」
- 木綿子
- 「なによ、しょうもないことって」
- 集平
- 「ダイエット成功しますように、とか」
- 木綿子
- 「あーっ、ばかにしとう。そんなん頼まへんよ」
- 集平
- 「ほんなら…ジョニーがかわいい子猫を産みますように」
- 木綿子
- 「あーーっ」
- 集平
- 「県大会出られますように…」
- 木綿子
- 「なんで、なんで?」
- 集平
- 「あったりまえじゃ。木綿子の考えることくらいわかるわ」
- 木綿子
- 「うちだって……集平はサッカーのことばっかり頼んだやろ。ミラクルシュートがバシッと決まりますように…ベスト8に残れますように…」
- 集平
- 「…あのなー、そんなんは、祈ったり、頼んだりすることとちゃうやろ。実力、実力や」
- 木綿子
- 「ほんでも、集平、『苦しいときの神頼み』得意やんか」
- (『ええお日和ですな』
二人の横を、参拝のおばあさんが歩いて行く)
- 木綿子
- 「こんにちわ。」
- 集平
- 「木綿子、ほんま、誰にでも声かけるなあ」
- 木綿子
- 「あれ、集平、知らんの?礼儀なんよ。お宮さんで会う人には誰にでもあいさつするもんよ。みんなーーふふふ…みんな『神頼み仲間』なんやもん」
- 集平
- 「あのなー、木綿子はほんましつこいわー。俺は今まで一回も『苦しいときの神頼み』なんかしたことないで」
- (木綿子、集平の顔をのぞき込みながら)
- 木綿子
- 「ほっ?へぇ?ふぅーっ…」
- 集平
- 「ほんまやて。俺は実力ちゅうんが好きなんや。シュウートを決めるんも実力。ゲームに勝つんも実力」
- 木綿子
- 「決まらへんのは?」
- 集平
- 「そりゃ……実力がないんや」
- 木綿子
- 「あれ?どないしたん?今日はえらいあっさり認めるやんか。ほんでも、うちは集平の実力信じとるよ。だから、あとは、『神頼み』や。うち、ようよう、頼んであげたし…」
- 集平
- 「いらんことするな」
- 木綿子
- 「ついでに、ええ彼女もできますようにって」
- 集平
- 「そんなん、誰が頼んだ?勝手に祈るな」
- 木綿子
- 「誰にも頼まれへんけど…」
- 集平
- 「ほな、頼むな。ほっといてくれ」
- 木綿子
- 「そっかー、よう考えたら、聞いてなかったわ、集平の好みのタイプ。言うてみ、どんな彼女がほしいんか」
- 集平
- 「ほしない」
- 木綿子
- 「まあ、だいたいわかるけど。髪が長ごーて、顔がすーっとしてて、女らしゅうて、黙って集平の後ろからついていくような…」
- 集平
- 「はずれや。かわいいて、甘えん坊で、ちょっとわがままで、ちょっとあほで…」
- 木綿子
- 「ひぇーっ、集平、あほな子がええん?」
- 集平
- 「あのなー、もう…。どっちにしても俺のことは頼んだりするな。自分のことを頼んどけ」
- 木綿子
- 「もちろんや。うちは頼んだで。(木綿子ベンチの方へ走りながら、ふりかえって)いっぱい、いっぱい頼んだでー」
- (集平追いつく。二人ならんでベンチに座る。
二人、黙って街を見下ろす。鈴の音)
- 木綿子
- 「また、誰か願い事してはる……小春日和いうんやろ、こんな天気
- 集平
- 「うん」
- 木綿子
- 「気持ちええなあ」
- 集平
- 「……叶うたらええな、願い事…」
- 木綿子
- 「…うん……」
- (鳥の声。鈴の音)