- 女
- まあるい地球の どこかに
さかさに 伸びている
大きな樹が あって
花は 咲かないのに
花粉が 飛ぶように
その樹から
ふわり ふわり
新しい命が うまれているの
楽しくなるわ
- 男
- ぼくは この葉に なってみたい
この葉に なってみると
生き返ってきた恐竜が
もどってくるような
息をとめて この葉になって
ほら ね
- 女
- 私も 幼稚園の
大きな いちょうの木
通学路の途中にあった
ポプラの木
今でも 心の中で
いちょうの葉も
ポプラの葉も
ユラユラ 風にゆれている
- 男
- いつか 砂浜に座っていたら
足の釣り糸のからんだままの鳩
言葉を 持たない鳩が
言葉にはない
親しさで近づいてきた
家に戻っても
その鳩が そこに
そのまま いるわけはないのに
そのままの姿で浮かんで
夢の中のぼくに話しかける
- 女
- 私の宝物の中に
海を大きく またいで
七色の虹のでた日
この砂浜で探した
虹色の小さな貝が五つ
あなたに二つ
プレゼントするわ
- 男
- 今度 美術館へ 行こう
ぼくの好きな絵を
君に見せたい
- 女
- 本当に天国があると思った少女に
星を見つけた
湖のそばの少年に
フルートをいつも持っている少女に
童話をつくる少女にあって
仲良くしたい
はしごをかけたレモン色の月
海はいつも
うれしい空につながり
宝物のふたが
ほんのすこしづつ開いて
未来のうつりそうな
ガラス玉の中で
しあわせがクルクルまわる
手をつなごう
五月の花の町を歩くのは
すこし急な坂道でも
あなたがいるからこわくない
昨日の友達の結婚式
ワインはブルゴーニュ
二人に乾杯
つまり こんなふうに
水玉色の 昨日と
ピンク色の 今日と
こいみどりの 明日が
かわるがわる来る
- 男
- 日がのぼり 月のでるまで
ぼくたちの話をしよう
ぼくたちだけで 話をしよう
五月の風は やさしい
ずっと待っていた
うれしい季節が
一度にやってきた
みどりの海
みどりのフカ
みどりのにおい
- 女
- よせてくる波の ひとつひとつを
リボンでむすぼう
この海は わたしたちの
思い出作り
- 男
- 沖合を 貨物船が
遠い国へ むかっていく
ぼくたちも
手こぎの小さな船で
船出しよう