- 男
- いつも 君とすれちがうと
あまい花のにおい なんの花だろう
たくさんの花の種類を知らないから
このにおいと 同じ花があっても
君に つたえられない
君は いつでも かろやかに
駅までの通りを 駅の階段を
駅のプラットホームを
歩いて行く
君と ぐうぜん すれちがったあと
ハッピーな ぼくに かわることを
とおりすぎていく君は
気がついていない
- 女
- 耳のながいピンクの うさぎの風船が
青い空を ゆっくり あがっていったvいつも空をみると 届かないところで
フワリフワリしているのが
みえる
春だから 明日は
ピンクのセーター
ピンクのマニキュア
- 男
- 夢の中で夢をみる
海べりの駅のプラットホームで
朝の海の色
海の中の 潮目をさがす
わたり鳥のように地球をまわり
また もどってくる
夢の中でみた夢のぼくは
海の水にとけてしまったものを
さがしている
なにか一生懸命さがしているのに
さがしているものがなにか
夢の中では わからない
海べりの駅の まあるいおおきな時計
夢のなかでは 針がない
時間なんて時計がなければ
ないのとおなじだ
- 女
- クリスタルガラスの花瓶の下に
ながなが編みと こまか編みであむ
レース糸で まあるく花瓶敷きを編む
四月中に
水瓶座のあなたには
新しい出会いが待っています
うれしいわ
窓の下で小猫が
陽なたぼっこをしている
- 男
- 心のなかにシャバシャバと
白い小さな波が
くりかえし くりかえし よせてくる
いま君はどこにいるの
いま君はなにを おもっているの
今日も すれちがわない
今日も 君とあわない
- 女
- パステルで花の絵を描く
白い額にいれる
それから どの季節よりも
産まれた日の ラベルのついた
卵を 手のひらにいれて
温める
わたしだけでなく
だれかと
気のとおくなるほどの
長い時間 手の中であたためたい
ごきげんよう
いつか きっと うまれてくるよね
- 男
- こんにちは 君は犬がすきですか
こんにちわ 君はぼんやりしているのが
好きですか
こんにちは 君はシュークリームは好き
ですか
こんにちわ 君はぼくを好きですか
今度 あったら名前をきこう
- 女
- ちゅうりっぷの 球根七百個
二月に作った 苗床から
赤 ピンク 白
植木鉢にうえかえて
元気をだして下さい
一人ぼっちではありません
お年寄りの 仮設住宅に
色とりどりの 花を
もうひとつの袋の中には
やさしい言葉のプレゼント
愛の花リレーのシールを
植木鉢にはって
わたしに出来る小さなボランティア
明日 まわり道して 大好きな
海へいってみよう
地震の前 海岸から
鳩がいなくなった
鳥は わかっていたのかもしれない
- 男
- 明日の日曜日 晴れたら
波打ちぎわの砂浜を
ひさしぶりに 歩こう
ぼくは25才
君はいくつだろう
- 女
- 昨日の雨で砂がしめっている
空気も あたたかく
ぼんやり 淡路島がふくらんでいる
わたしがベットの上で こわくて
泣きながら
揺られていた地震の時
この海の中
魚たちは
どうしていたのだろう
- 男
- あの女の子が海へきている
今日は なんだか
ハッピーな 気がしたんだ
散歩ですか
駅でときどき あいますね
海べりのコーヒーショップで
すこし お話を しませんか