第135話 (98/10/30 ON AIR)
『お風呂さま、ビールさま。』 作:冬乃 モミジ

登場人物
彼女

 

(お風呂の中。湯船のお湯の音とか、洗面器の音とかが、聞
こえる。振り向いた時のお湯の音。ドアを開ける音。など。)
彼女独り言  ふ~っっっ…ほんま極楽、あぁぁぁ~体中がと
けていく(ブクブクブク)
会社にも銭湯とかあったらええねんなぁ。そし
たら少々腹立ってても、ひとっ風呂浴びて気分
なおして仕事が出来るってなもんやのに…ふぁ
ぁぁ…あかんわ、風呂なんか入ってたら仕事す
る気なくなるわ。……、さっき、ちょっと言い
すぎたかなぁ。そーや、家帰って顔見る前に、
まずお風呂入ったらええねんな。そしたら、わ
ざわざ愚痴ったあげくに八つ当たりして、こう
して反省することもないわけやんか。せや、玄
関入る前にお風呂があったらええねん、そらも
うええ声で「ただいま」、…玄関の前のお風呂
てどんなんやねん。……怒ってるかな…(浴室
のドアをちょっと開けて)ねぇー!
はぁ~?なにぃ~?(部屋の奥からいたっての
んびりした返事)
彼女 …なんもないー
浴室のドアをしめる
(なんやねん。)
彼女  よかった。…のんきな人で。…あ、わかった!
帰りに銭湯寄ってきたらええねんな。そらもう
晴れ晴れした声で「ただいま」、…あかん、一
人だけお風呂済ませてきたら、気分悪いわな、
「部屋に風呂あんのに不経済や」とか言いそう
やし、あ、共同生活って大変や(ブクブクブク)
浴室の外から声
なぁ~。
え?…何?
ビール、先飲んでるで。
ええー、…ええよ。
(笑)機嫌なおったんか?
 …ん?んーー(笑)なあ、(浴室のドアをちょ
っと開けて)さっきゴメン。悪かった。反省し
た。
ホンマか?
うん、ホンマ。
風呂とビールのないとこでは、おまえとは暮ら
されへんな。
彼女 …うん、そうかもしれへん。
(笑)冷えるで。
彼女 うん。
浴室のドアをしめる。
(ドアの向こうから声)グラス冷やしといたる
わ。
彼女 ありがとう。…(独り言)ええとこあるやんか。
彼女 結婚しようかな。…とか、思ったりして。(笑)
さっき共同生活は大変やて、思ってたくせに、
私は。単純か。(笑)
彼女 浴室の外から声
なぁ~。
彼女 わぁ!…びくりした。何?
開けるで。(浴室のドアをちょっと開ける)
彼女 何?
…なぁ、…結婚しよっか。
彼女 え?…な、なんで?
なんか、チャップンチャップンいう音聞いてた
ら、それもええかなーって。
彼女 なによそれ。ビールまわってんちゃう?
いや、まだ一杯目やで。今日、満月か?
彼女 さぁ、なんで?
満月の夜は、思いきったことするヤツ多いらし
いから。
彼女 なんじゃそれ、…それ、…また、今度考えよ。
そやな、今度にしよ。…はよ、あがって一緒に
ビール飲もうぜ。
浴室のドアをしめる
彼女 …はあー…びっくりした。…(ブクブクブク)
…フフフフフフ(笑)アカン、のぼせる。
湯船からあがる。