第82話 (97/10/24 ON AIR) | ||
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『クロコダイル・ダンディ』 | 作:み群 杏子 |
女 | あいつと暮らした日々が、長かったのか、短
かったのか、今ではもうよくわからない。 あいつは、古いアパートの小さなバスルームが、 なぜか気に入っていたようで、 |
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男 |
わからないかなあ。僕が気に入ってたのは、
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女 |
そんなこと言ったって、水なしには生きてい |
男 | かなちゃん、まだぁ? |
女 |
初めてあいつに会った時には、さすがの私も驚いた。 |
男 |
やあ! |
女 |
なんて、バスタブの中から、ワニなんかに挨
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男 |
だって、かなちゃん、僕のこと、すっごく、 |
女 |
でも、私が気に入ってたのは、夕焼けに染まる |
男 |
じゃ、僕のことは? |
女 |
あのナイル川に、ワニなんか、浮かんでいたっけ。 |
男 |
そりゃ、ないよ。 |
女 |
ワニが、あんまりがっかりするので、いじら
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男 |
恋とは、理不尽なものなのさ。 |
女 |
時々、わけしり顔に、ダンディが言う。 |
男 |
おかえり、かなちゃん。 |
女 |
と、出迎えてくれるのだ。洗濯物は、ちゃんと
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* |
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女 |
そんな日々が一ヵ月続いた。気がついたら、 |
男 |
なんの? |
女 |
写真集、返さなくちゃ。 |
男 |
そう… |
女 |
どうする? |
男 |
どうするって… |
女 |
ダンディは、迷って、やっぱり本と一緒に、 |
男 |
おやすみ、かなちゃん。 |
女 |
そして、翌朝、ダンディは、消えていた。 |
* |
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女 |
さみしくなると、図書館へ行って、私は、あの
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男 |
元気かい、かなちゃん。 |
END |