第64話(97/06/20 ON AIR) | ||
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『ゆっこの結婚』 | 作:飛鳥 たまき |
(居酒屋のざわめき。 学生時代の友人三人が久しぶりに会う。 約束の時間より少し早くミカがやって来た。 店員に案内されて奥のテーブルにつく。) |
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店員 |
「ご注文は?」 |
ミカ |
「…みんながそろってから…」 |
店員 |
「ごゆっくり」 |
(店員、水とおしぼりをテーブルにおいて去る。 ミカ、おしぼりで手をふく。 そこへ真紀子がやって来る。) |
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真紀子 |
「ミカ早いじゃない。ゆっこは?」 |
(真紀子イスをがたがた言わせてすわる) |
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真紀子 |
「(冷静に)ニュース、ニュースよ」 |
ミカ |
「何?」 |
真紀子 |
「びっくりしなさいよ」 |
ミカ |
「わかった。びっくりする」 |
真紀子 |
「ゆっこが結婚しまーす」 |
ミカ |
「?!……ゆっこが?…」 |
真紀子 |
「そう。」 |
ミカ |
「うっそーー……ほんと?」 |
真紀子 |
「ほんと」 |
ミカ |
「いつ?」 |
真紀子 |
「六月最後の日曜日」 |
ミカ |
「ええっ…!信じられない」 |
真紀子 |
「よね。」 |
ミカ |
「だ……?誰と?」 |
真紀子 |
「ほら、あの人、桐山くん」 |
ミカ |
「ゆっこが……」 |
(二人そろって水を飲む。顔を見合わす) |
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ミカ |
「確か言ってたよね」 |
真紀子 |
「言ってたよ」 |
ミカ |
「結婚なんて紙切れ一枚のこと。意味がない」 |
ミカ |
「好きな人と一緒にいるだけでいい」 |
ミカ |
「形なんかどうだっていい。一緒に住むのにどうして 役所なんぞに届けを出さねばならないんだよーー 役所に許可なんかしてほしくないわ、って」 |
真紀子 |
「やりたいこといっぱいあるから、結婚なんて二十年 先って」 |
ミカ |
「結婚式なんかしないって」 |
真紀子 |
「それが、パーティするって。だから私たち盛り 上げてやりゃなきゃね」 |
ミカ |
「ええっ?!」 |
真紀子 |
「うん。桐山くんがね、みんなにお祝いしてもらおうっ て」 |
ミカ |
「彼が…」 |
真紀子 |
「みんなに祝ってもらったほうが嬉しいよ、楽しいよ、 って言ったんだって」 |
ミカ |
「……ふーん、彼のいう通りにしたんだ…合わすとか、 ついていくとか、大嫌いって言ってたのに」 |
真紀子 |
「ミカ、それは読みが浅いわー。ゆっこは桐山くんに 合わせたんじゃないと思うな。ゆっこは自分もそう 思ったんだよ。だから、パーティすることにしたん だと思うよ」 |
ミカ |
「…それが好きっていうことよね」 |
真紀子 |
「ちょっと違うと思うけど…でも、私も桐山くんの意 見に賛成。だってー嬉しいもん。お祝いしてやりた いじゃない。」 |
ミカ |
「ウエディングドレス着るのかな」 |
真紀子 |
「そりゃ、着るでしょ」 |
ミカ |
「そっかなー意味がないっていってなかった?」 |
真紀子 |
「ふふふ…矛盾はしないよ。ウエディングドレス着たっ て。だって、あれを着れるのは、あの日しかないも んね。のがす手はないよ」 |
ミカ |
「……あーいいなー、ゆっこ、どんなドレス着るんだろ」 |
(真紀子、手を上げ店の人を呼ぶ) |
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真紀子 |
「とりあえず、ビール頼も」 |
ミカ |
「うん」 |
真紀子 |
「生中…TWO」 |
店員 |
「…他には?」 |
ミカ |
「あとでいいです。みんなそろってから」 |
(店員去る) |
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ミカ |
「桐山くんってどんな人?会ったことある?」 |
真紀子 |
「一度だけ。……えーとね、しょうゆ顔で、やさしそう な感じ、かな?」 |
ミカ |
「やさしい人かーいいなー」 |
真紀子 |
「あれ?ミカは強い男がいいんじゃなかった?」 |
ミカ |
「強くて、やさしい人」 |
真紀子 |
「私は弱っちい男が魅力」 |
ミカ |
「弱いのだめ。強くなきゃいざっていう時、守ってくれ ないもん」 |
真紀子 |
「あら、そ。守ってあげたくなるような、なよなよし た男、私しゃ好きだけどな。はっぱかけて、私好み の男にしていくって、いいじゃない」 |
ミカ |
「ああああ、真紀子の私しゃが出たぞー…私は…… スポーツマンで、たくましくて、やさしくて…」 |
真紀子 |
「ゆっこによると、桐山くんって、すごい正義漢で 熱血漢なんだって。キレルとこわいんだって」 |
ミカ |
「ゆっこがこわい?へえー…あの強いゆっこが…」 |
真紀子 |
「ゆっこ、そこに惚れたのかもね」 |
(二人、顔を見合わせてうなづく。 ビールがくる) |
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真紀子 |
「ゆっこに!」 |
ミカ |
「かんぱい!」 |
(二人、おいしそうに飲む) |
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真紀子 |
「まあ、ゆっこの選ぶ人だもの少し変わってるかも ね」 |
ミカ |
「いいなー、あこがれのジューンブライド」 |
真紀子 |
「何いっての。それはヨーロッパの話。梅雨の日本 では、あこがれってほどじゃないわ」 |
ミカ |
「いいもん。だったら私、私はね、胸が少し、ほんの 少しあいてて、パフ袖で、後ろに大きなりぼんがつい てて、長いベールで…レースの短い手袋をして…」 |
真紀子 |
「はいはい、ミカはそうしなさい。白雪姫みたいなド レスよね。私は母のドレスを着るの。営々と続く女の 愛の歴史を、母も着たドレスで表現するのよ。 でも、着るのは私、現代の女。今から新しい愛の歴 史を作っていくの。ミカ、あなたには特に言ってお くわ。女は男についていくだけじゃだめだからね。 男につくすのが美徳じゃないからね。それが女らし いんじゃないからね。女……」 |
ミカ |
「ストップ。真紀子は理屈っぽいんだから。せっかく すてきな花嫁姿想像してたのに…」 |
真紀子 |
「ううん、私しゃ、言っておきたいの」 |
ミカ |
「愛に生きるミカはどうすりゃいいんだー」 |
真紀子 |
「あのねえ…夢とか、目的とかあるでしょ。…男が頼 りないんだからね、女がしっかり、理想とかビジョ ンとか持たなきゃ、地球は滅亡よ」 |
ミカ |
「そっかなー、愛が一番大事だと思うけどなーラブ アンド ピース。愛があればなんとかなると思う けど……ゆっこだってなんだかんだ言ってたけど、 きっと、桐山くんのことすっごく好きになったんだ と思うな」 |
真紀子 |
「そりゃ、そう。ゆっこは桐山くんを好き。ラブ アンド ピース、もちろん。その上で私しゃ言っ てるの」 |
ミカ |
「だけど、不思議よね、私たち。どうして友達なん だろう。考え方こんなに違うのに」 |
真紀子 |
「あら、三人とも愛にあふれてるからでしょ」 |
(ゆっこ現れる) |
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ミカ |
「…ゆっこーーここ!…おめでとう!」 |
真紀子 |
「おめでとう!」 |