第61話(97/05/30 ON AIR) | ||
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『待ち合わせに気を付けろ! 風雲立志編』 |
作:伊藤 えん魔 |
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街の雑踏ノイズ。待ち合わせをしている男女がそれぞれ。 |
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男 |
遅いなぁ。伊藤のヤツ、ちゃんと待ち合わせ時間伝えてくれたん だろうなぁ。初めてのデートだってのに、いきなりすれ違いだなん てチョベリバドベバドバベドバだもんなぁ。何、言ってんだ俺。 「無茶苦茶イケてるモデル系美人」って言うから、今日は気合い入 れてめかしこんできたんだぞ。おっといかんいかん、いきなり眉間 に皺よせてたりしたら感じ悪いもんな。とにかく笑顔笑顔。それから スキップスキップって何うかれてんだ俺。しかし、腹立つなぁ、伊藤。 |
女 |
遅いわねぇ。魔子ったら、「彼にはちゃんと約束とりつけたから」 なんて言って忘れたんじゃないの?初めてのデートなのに、いきなり すれ違いだなんて、アッと驚くガチョーン御呼びでないスラスラスイ スイだわ。いけない、いけない。そんなに歳でもないクセにクレイジ ーキャッツファンだなんて事がばれたら言い訳できないし。せっかく お洒落してきたのにな。それにしても遅いなぁ。アレ?さっきから向 こう側で立ってる男の人も誰かと待ち合わせかしら?ニコニコしたり 突然眉間に皺寄せたり。なんでスキップなんかしてんのかしら? 変な人。 |
男 |
おや?向こう側に立ってる女の子も待ち合わせかなぁ。あの手の形 は確かにガチョーンだったぞ。スーダラ節なんて口ずさんで、変な子。 待ち合わせスッポカされでもしてんのかなぁ。かわいそうに。そう言 えば今日会う子はグルーブとザードが好きだって言ってたっけ。もし、 仲良くなれたらライブのチケットでもとろう。身長170センチのモ デル系って話だもんな。格好つけないと。もう30分も過ぎてるぞ。 どうなってんだよ。もう、向こうにいるあの子しかいなくなったぞ。 でも、あの子、どう見ても150センチ台に強引にヒール履いてるな。 バランス悪そう。あ、こけた! |
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駆け寄る男。 |
男 |
大丈夫ですか?ほら、掴まって。 |
女 |
は、はい、大丈夫です。履き慣れない靴履いてきたもので、つい。 ありがとうございます。あ、スーツ汚れてしまいましたよ? |
男 |
いいんですよ、服なんて。 |
女 |
でも、 |
男 |
本当にいいから。それよりなんともない? |
女 |
はい。 |
男 |
そう。じゃ、気をつけて。 |
女 |
どうも、ありがとうございました。 |
女 |
はぁ、コケちゃった。もう、魔子が私の事、身長の高いモデル系 だなんて言ったらしいから無理してハイヒール履いてきたけど。格好 悪いったらありゃしない。それにしても、今の人やさしいわねぇ。わ ざわざ駆け付けて助けてくれるなんて。あんな感じのいい人スッポカ してる女ってどういうヤツ?今日会う人があんな人だったらいいなぁ。 話じゃキムタクっぽいって事だけど、それならあんなビシッとしたス ーツなんか着ないわよね。私、木村拓哉大好きなのよねぇ。うふふ、 似てるといいなぁ。 |
男 |
せっかくのスーツが汚れたよ。俺ってお人よしすぎるのかなぁ。な んでも、伊藤が木村太郎みたいにきめていけっ言うからスーツなんか 着てきたけど、肩凝るぜ。それにしても、今の女の子、かわいかった ぞ?近くに寄ってみないとわからないもんだな。モデル系じゃないけ ど、結構いいじゃない。おいおい、そんな事より俺の相手はどうなっ てんだ?ちょっと、伊藤に電話でもしてみよう。本当に約束は今日な んだろうな。(ゴソゴソ) わぁ!アラ! ドワァッ! |
女 |
あぁあぁ!?さっきの人、道路に財布の中身捲き散らしてるわ! 何やってんのかしら!? |
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駆け寄る女。 |
女 |
大丈夫ですか? |
男 |
あ、すいません! |
女 |
わぁ、テレホンカード一杯お持ちなんですね。 |
男 |
い、いやぁ。たまたまですよ。あは、あはは。 |
女 |
これで全部ですか? |
男 |
はい。ありがとうございました。 |
女 |
それじゃ。 |
男 |
ええ、それじゃ。 |
男 |
ふぅ、まずいまずい。俺の趣味がテレカ集めだってバレなかったろ うな。一応、メインの趣味はスノボーとボディボードって言っておい たけど、もし今のが待ち合わせの子だったら気持ち悪がられるトコロ だ。さっきのお返ししてくれたんだな。笑うとよけい感じいいな、あ の子…。ナオミ・キャンベルって言うより、広末涼子に似てる。ちょ っと言い過ぎか。おっと、それより伊藤に電話電話。 |
女 |
あれは確実にテレカ集めてるわね。ポートアイランドの夜景とか異 人館ならわかるけど、世界の珍獣に、須磨水族館・改修記念贈呈テレ カ。K1シリーズ「アンディ・フグ」から「角田伸郎」「サム・グレ コ」まであったもの。なんか照れちゃって、かわいいの。キムタクっ てより、柳沢慎吾って感じ。失礼かしら?あぁあ、私も魔子に電話し てみるか。 |
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電話の通話音。 |
男 |
どういう事だよ、伊藤!「ナオミ・キャンベル」みたいな女がその 辺にウロウロしてる訳ないだろう、わっはっはっ」って無責任な事言 うな!もう1時間も待ってんだぞ!? え! 実は身長は155セン チくらいだって? サバ読みすぎだ! 強引に言えば笑うとかわいい 広末涼子似って、お前…アッ!!もういい、またかける!何、笑って んだよ、お前!「フォレストガンプ」のビデオ?笑うな!泣けェッ! (ガチャ) |
女 |
魔子、それってひどくない?「キムタクみたいな男がその辺にウロ ウロしてる訳ないじゃない」って勝手な事言わないでよ! もう、1 時間も待ってんのよ!? え!? 実は木村太郎みたいなスーツを着 て待ってるらしい?ぜんっぜん違うじゃない!あえて言うなら柳沢慎 吾に似てるかもって、どこがスマップ系なのよ!?…アッ!!ところ でさっきから何うたってんのよ?「夜はヒッパレ?」見てるから切る って、ちょっと魔子!?(ガチャ) |
男 |
まいったなぁ…。 |
女 |
あぁあ、もうヤダ。 |
男 |
覚悟決めるしかないか…。 |
女 |
やだ、恐い顔してコッチに来るわ…。 |
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道路を渡ってくる足音。立ち止まる。雑踏の音がストップする。
と、同時に声をかけ合う二人。 |
男 |
あのう、 |
女 |
あのう、 |