X'mas Special (96/12/22 ON AIR)
『 ここはクリスマス 』 作:飛鳥 たまき

登場人物

1.ジャン
2.ベべ
3.男
4.女
5.サンタクロース


(モザイクガーデン三階の渡り橋に立つジャン。
 遠くのベベ、あるいは太陽、あるいは風に向かって
呼びかけるように)
ジャン ベベ‥‥
ベベ。君を想うだけで
ぼくの胸は嵐のように波立つ
べべ。君の名前をつぶやくだけで
ぼくの胸は喜びにあふれる。
ベベ、ベベ‥‥
同じ太陽を浴び
同じ風に吹かれ
同じ雲をみよう
(モザイクガーデン二階太陽通りの中央に立つベベ。
 空をあおいで、つぶやくように)    
ベベ 雲はどうして光るんだろう。
風はどうして歌うんだろう。
愛はどんな形?
永遠はどれくらいの長さ?
頬をすぎる風にそっとつぶやく。
刻む時に想いを紡ぐ。
あ・い・し・て・る。
(ジャン、ベベを見つけ、橋の上から呼ぶ)
ジャン 「ベベ!」
(ジャンの呼ぶ声に橋をみあげる)
ベベ 「ジャン!」
(サンタクロース、通りを行く人に声をかける)

「メリー クリスマス!  メリー クリスマス!」
(ジャン階段をとぶように降りてくる。息を切らせている)
ジャン 「……ベベ……探してたんだ、ずっと…」
ペベ 「私はここ。いつだって、あなたの目の前にいるわ」
ジャン 「君はいつも突然かき消えたようにいなくなる」
ベベ 「やだ。ずっとここにいたのよ」
(ジャンべべを正面からみつめる) 
ジャン 「そして…突然、現れる!」
ベベ 「クリスマス。ここはクリスマスよ」
(太陽通り、クリスマス)
「オルゴールはいかがですか、お嬢さん」
「愛してるっていったのよ、あの人は」
「恋人たちがくるくる回ってダンスするオルゴールはいかがですか」
「いつまでも、いつまでも愛するっていったのよ」
「それとも、おどけたピエロのオルゴール?」
「愛はどんな形?永遠はどれくらいの長さ?」
「オルゴールはいかがですか、お嬢さん。
愛を紡ぐオルゴールはいかがですか」

(太陽通りの雑踏。思い思いに店をのぞきながら)

ベベ 「かわいい花屋さん。小さな人の小さな家に飾るのね」
ジャン 「あったかそうな帽子……べべにはこの黄色がいいかなあ」
ベベ 「…光ってる…さすがクリスマスピアスね」
ジャン 「…マフラー…手袋のほうがいいかな、べべの指先、冷たいもんな」
ベベ 「…ブーツ。ダークブラウンのバックスキンよ…
 …ネックレス、黒いセーターにぴったりよね…
 …おしゃれなカード…ふふふ…サンタクロースだっ
 て南の国では暑いわ……あれ?あれっ…」

(べべ、ジャンがいないのに気づく)

ベベ 「ジャン………ジャン!」
(ジャン、アイスクリームを両手に走ってやってくる)

ジャン 「はい、べべには○○アイスクリーム」
ベベ 「ジャンには○○アイスクリーム」
(二人、腕を組んで歩きながら)
ベベ 「雪になるかしら」
ジャン 「しんしん降るといいね」
ベベ 「海にも降るかしら」
ジャン 「山にも降るよ」
ベベ 「街にも降るかしら」
ジャン 「クリスマスにも降るよ」
(べべ、急に組んでいた腕をほどいてショウウインドウへかけよる)
ベベ 「ジャン、見て見て。この黄色と青のダイビングウエア」
ジャン 「オーケイ!南の海で熱帯魚になるぞ」
ベベ 「わたしは、真っ黒ウエア。海の底でかくれんぼしよう」
ジャン 「(髪飾りをみつけて)べべ、べべ、こっち、こっち……
この髪飾り。べべによく似合うよ」
ベベ 「あー、髪を長くしておくのだったわ。来年、来年のクリスマ
スまで、とっておくわ」
 (サンタクロース、通りを行く人に声をかける)

「メリー クリスマス! メリー クリスマス!」

(光の広場。柵にもたれて、モザイクガーデンを見下ろす二人。
 ジェットコースターの音。叫び声。メリーゴーランドのまわる音、
メロディ、ゆっくり遠のいていく)
ジャン 「メリーゴーランドに一人で乗ると、ぐるぐる回りながら、
知らない所につれて行かれてしまうって」
ベベ 「こわいわ」
ジャン 「愛し合う二人で乗ると、帰って来られるって」
ベベ 「ジャンとべべのように?…よかったわ」
(遊園地の雑踏、メリーゴーランドのメロディ…だんだん大きくなる)
ジャン 「(メリーゴーランドに呼びかける)メリーゴーランド!
 お前の愛の木馬、ゴーゴと回せ!」

(サンタクロース、鐘を鳴らしてパーティの始まりを告げる)

 「レディース&ジェントルマン!…………」
ベベ 「パーティが始まるわ」
(ジャン、踊り始める)
ジャン 「踊ろう!クリスマスだよ」
(ジャン、べべの手をとり踊り始める。パーティの賑わいのなかに
 はいっていく。シャンパンをぬく音、クラッカーの弾ける音…)
  「メリー クリスマス!」
  「メリー クリスマス!」
       
                           ENDING