第30話 (96/10/25 ON AIR) | ||
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『夜十一時のラブ・コール』 | 作:水こし 町子 |
女 |
もしもし 何しているの? 今朝ね、外の植木鉢の底に こおろぎが二匹いたの そっとつかまえて 部屋の中にある カポックの植木鉢の中にいれて 仲良くしましょうね 声をかけたら とってもきれいな声で 返事をするように啼きだして それから時々 本当に時々 思い出したようになくの |
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男 |
かごにいれなくて よく逃げ出さないね |
女 |
三年前はずっと 下駄箱のうしろにこおろぎが 住みついていたのよ |
男 |
へんな家だ |
女 |
へんなのよ なにを食べていたのかしら? 冬になって こおろぎのこと すっかり忘れてしまって |
男 |
いつのまにか こおろぎが いっぱい友達をつれてきて 君の部屋が こおろぎの部屋になったら |
女 |
その時は あなたの部屋に 引っ越してもいい? |
男 |
早くこおろぎが 君の部屋に ともだちを連れてくるといいな |
女 |
あなたの部屋の 窓から何がみえる? |
男 |
うーん 大きな 三角のピラミッド 石の角が すりへっている 一番下から いくつの石が 積まれているのだろう あっ ラクダの隊列が むこうのほうから こちらにやってくる |
女 |
そのラクダには 王子さまと 王女さまがのっているのよね |
男 |
本当のラクダの背中は すべって座りにくいんだ 王子さまも 王女さまも ラクダの背中から すべり落ちてしまいました ラクダはどんどん行ってしまいます 砂の上で 王女さまはベソをかいています |
女 |
王子さまは 泣いている王女さまを おんぶして ラクダを追いかけなければ |
男 |
ピラミッドがみえるなんて いわなければよかった ここからは みか月しか見えない まるい地球の どこへいっても 形が違うだけで おなじ月なんだよね |
女 |
こおろぎがなきだしたわ 聞こえる? |
男 |
須磨の海も すっかり静かになったね ヨット・ハーバーの イタリアン・レストランで 秋色の海を見ながら 次のデートは食事をしよう |