第12話 (96/06/21 ON AIR) | ||
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『丘の上の二人』 | 作:飛鳥 たまき |
(丘の上、空には雲。草にねころぶ二人) |
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女 | 気持ちいい!! |
男 | うーん。おれ、今、鷹の気分だな。 |
女 | おっとー、今日は鳥できたな。 |
男 | 目が鋭くて。りりしくって…。 |
女 | そう。じゃあ、私は…鷲。 ワシーッとあなたをおそってやろう。 |
男 | それ、うまくないよー。どうせなら同じものになろうよ。 …猫。 |
女 | いいわ。かわいくて、毛並みつややかで、白いふわふわの猫。 レースの揺れる窓辺に優雅にすわっていの。 あなたは…いつも私を憧れの眼差しで見てるのら猫。 |
男 | 広い外の世界で自由に生きている猫。自由猫さ。 |
女 | そうかな?太りすぎちゃって、木には登れないし、 バク転しては目を回すしー。 |
男 | 強くって、ハンサムで、耳の切れた灰色の猫って いやあ、この辺りじゃあ知らない者はないぜ。 |
女 | 窓の下に来ていつも私を呼ぶのね。 |
男 | ニャーオーン… |
女 | ふふふ…ママさんに頼んであげてもいいわよ。 夕食は大好きなマグロの缶詰、牛乳だって飲み放題よ。 ねぇ、うちにいらっしゃいよ。 |
男 | 何いってんだよ。こうなったら奥の手だな。 ミャオーン…ボードレールで迫るぞ。 悪魔から、また神からつかわされても、 天使でも、人魚でも、 かまうものか--ビロードの眼の妖精よ、 律動よ、薫りよ、光よ、 おお、ぼくのただひとりの女王!- |
女 | きっと悲劇よね。かなわぬ恋になるわ、きっと… |
男 | 止めた、やめた。猫はやめたぞ。… …くじら。おれ、くじらになる。 豪快に潮を吹いて、得意のクロールで… |
女 | もう!なりきれないんだから。 くじらはくじら泳ぎよ。 |
男 | 南氷洋の真っ青な海、赤い太陽が沈んでいく。 |
女 | いい! ロマンチック! |
男 | 俺は君を抱き寄せる… |
女 | 待って。私、マンボウがいい。 |
男 | そんなぁー同じものになろうよー |
女 | いいじゃない。くじらとマンボウのツーショット。 マンボウはゆらゆら揺れながらくじらのジャンプを 見てるのよ。力強いな、いいなぁって。 |
男 | そう?じゃあ3回転ジャンプをみせてやろっか。 |
女 | きゃあー |
男 | なんだよう。 |
女 | 波が強くって、岩にたたきつけられたじゃないの、もう! |
男 | なんかうまくいかないなー。 よし、これで決まりだ。天然記念物。 これ以上はないぜ。 おれはイリオモテヤマネコ。 |
女 | あっ、自分ばっかり… |
男 | 君にもいいの考えてやったよ。 レッサーパンダ。 のらのレッサーパンダ。 海を渡っておれに会いに来たんだ。 |
女 | あっ、勘違い。冒険を求めて海を渡ったのよ。 もっと、もっと南に行くの。せっかく会えたのに 残念だわ。 |
男 | そんなー、ここにいろよ。おれが面倒みてやるし。 |
女 | ダメ。血が騒ぐの。 私はアドベンチャーレッサーパンダなの。 |
男 | 思うようにいかないなぁー |
女 | あしたは、カエル。 長雨でたいくつしているあなたのそばで歌ってあげるわ。 あさっては、羊。 眠れないあなたのために 友達一万匹連れていってあげる。 しあさっては、アンドロメダ星人。 そのつぎは… |