第208話 (2000/03/24 ON AIR) | ||
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『春はあけぼの、お鍋はいかが?』
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作:花田 明子 |
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そこは高岡のアパートの前。 |
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石川 | こんばんは。 |
高岡 | (ジョークとして)やあ。 |
石川 | (笑いつつ)遅くなっちゃった。 |
高岡 | いいよ。 |
買い物した大きな袋を持った石川、高岡のアパートに入る。 |
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石川 | おお、片付いてる |
高岡 | もちろんですよ。 |
石川 | 片付けたのか |
高岡 | 当然ですよ、クリーンなイメージが売りですから。 |
石川 | (笑いつつ)どういう意味よ。 |
高岡 | (はりきりつつ)さてさて、野菜でも切りますか。 |
石川 | あ、いい。野菜はもう切ってきた。 |
高岡 | え? |
石川 | 会社の昼休みに、買いに行って昼休み中に給湯室でいろいろ。 |
高岡 | それはそれは。(野菜をだしつつ)お、本当だ。 |
石川 | だって急に残業って言われたからさ。とりあえず鍋の用意の短縮 |
高岡 | ちょっと、ちょっと、何これ。 |
石川 | え、何って? |
高岡 | これ…これ、何人分? |
石川 | えーっと…一応二人分なのですが……。 |
高岡 | これで…? |
一瞬の間 |
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石川 | もしかして多い? |
高岡 | いや……うーん、いや頑張るよ。 |
石川 | いや、頑張って食べるもんじゃないからさ。 |
高岡 | ああ、実はちょっとだけパンを食べたんだ |
石川 | ああ、そうだよね。だってもたないもんね。 |
高岡 | うん。鍋に備えてお腹にたまらないものと思ってさ。 |
石川 | うん。 |
高岡 | 甘いパンを二つばかし…。 |
石川 | ……そっか……てっきり高岡さん、食べるんじゃないかと思って。 |
高岡 | いや僕も全盛期はすごかったんだが……まぁもう34だからさ…。 |
石川 | ……じゃあ、まぁ野菜は調節しつつ。 |
高岡 | そうだね……頑張るよ。。 |
石川 | だから頑張らなくていいったら。 |
高岡 | オーケーオーケー。ではでは、俺は何をしたらいい? |
石川 | えっと、コンロは? |
高岡 | えっと、コンロは? |
石川 | うん、、それと、 |
高岡 | あ、鍋はちょっと小さいが用意した。これでいいだろ? |
石川 | あ、それなんだけどね。はい。 |
石川 | え、持ってきたの? |
石川 | うん。鍋は真剣だから。 |
高岡 | 真剣って。 |
石川 | だって昨日、電話で小さいのしかないけど…って言ってたから。 |
高岡 | 石川。お前、こんなでかい鍋持って会社に行ってたの? |
石川 | うん。会社の女の子に見つかったら嫌だから、今日は8時前に出社した。 |
高岡 | (感心しつつ)それは…ご苦労さまでした。 |
石川 | 何の、何の。だって鍋ですから。 |
高岡 | おう、だって鍋だものな。 |
石川 | 高岡さん、鍋に水いれて。 |
高岡 | よしきた。まかしとけ。得意分野だ。 |
石川 | (笑う) |
高岡、鍋に水を入れている。 |
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高岡 | (水を入れつつ)めしがいるだろうと思ってさ。 |
石川 | (豚肉を切りつつ)うん。 |
高岡 | これ買ったけどいらなさそうだな。 |
石川 | あ、パックごはん。 |
高岡 | うん。 |
石川 | いや、炊飯器が壊れちゃってさ。 |
高岡 | あらら。 |
石川 | あ、でももしよかったら最期に雑炊つくろう。 |
高岡 | え、キムチ鍋に雑炊? |
石川 | うん、おいしんだよ。卵いれてさ。 |
高岡 | 辛くないの?。 |
石川 | と、思うでしょ?キャベツや野菜の甘さがぐんとでて、おいしんだな。 |
高岡 | へーえ。キャベツか。白菜じゃなく? |
石川 | あ、白菜も入れる。それに、えのきに椎茸に豆腐に、豚肉に、ねぎに、 |
高岡 | おいおい、それ、帆立じゃないか。 |
石川 | うん、魚介も入れるとおいしいんだよ。 |
高岡 | 豪勢だな。 |
石川 | 一見ね。豚肉も100グラム120円のを300買ったんだけど、60円負けてもらった。 |
高岡 | お、流石。 |
石川 | 任して下さい、キャップ。これから私のことを「買い物上手さん」と呼んで下さい。 |
高岡 | うん。分かった。…でもちょっと長いな。 |
石川 | あ、それとね、これこれ。 |
高岡 | ん? |
石川 | そば。 |
高岡 | あれ、それって中華ソバじゃん。 |
石川 | そう。うどんもいいけど、これがおいしいの。 |
高岡 | (その量に驚きつつ)2つも? |
石川 | あ……多ければ少しだけ入れようね。 |
高岡 | そうしよう。そうしよう。………で、「買い物上手さん」 |
石川 | はい? |
高岡 | 水を入れた鍋が用意できました。次は何を? |
石川 | は、次はじゃん、これです。 |
高岡 | お、「キムチ鍋の素」。 |
石川 | うん。これを水3、「キムチ鍋の素」1ビン入れて下さい。 |
高岡 | あらら、もう水入れちゃった。 |
石川 | ……えーっと……申し訳ないのですが…。 |
高岡 | 了解です。計りなおします。 |
再び、高岡、キッチンの方へ来て、鍋に水を入れる。 |
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石川 | それと、キムチと……。 |
高岡 | (水を入れつつ)おう。。 |
石川 | 豆腐好き? |
高岡 | んん? |
石川 | 豆腐、好き?そこそこ?あんまり?。 |
高岡 | 私を誰だと思ってるんだ。 |
石川 | 何、それ。 |
高岡 | もちろん、食べますよー豆腐。だって豆腐だろ? |
石川 | 困った人だな。そうじゃなくて。 |
高岡 | 何。 |
石川 | 豆腐、一丁は無理だよね。 |
高岡 | ああ……それは…ちょっと。 |
石川 | うん。じゃあ半分だけにする。 |
石川、豆腐を切っている。 |
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石川 | 豆腐を切っている。 そういうことなら、そういう風に聞いてよ。 |
石川 | (笑いつつ)何で、分かるでしょ。 |
高岡 | いや、豆腐にまつわるユーモアを言えって言われてるのかと 思ってさ。 |
石川 | (笑いつつ)そんなわけないよ。 |
高岡 | まあ、そうだが…。 |
石川 | よし、準備、オーケー。 |
高岡 | よしきた、こっちもオーケーだ。 |
石川 | キャップ。火を付けて下さい。。 |
高岡 | 分かりました。私、こんなにも重大な任務を「買い物上手さん」から頂 |
石川 | 分かったから、コンロに火を付けて下さいませ。 |
高岡 | 了解! |
コンロに火が付いた。 |
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高岡 | 何か、かけるか。 |
石川 | あ、そうだね。 |
高岡 | あ、そうだ。マーシーかけるか?君から頂いた真島昌利。 |
石川 | あ、えーっとね……いや別のでいいよ。 |
高岡 | あ、そう? |
石川 | うん、何か適当にかけて。。 |
高岡 | オーケイ。 |
と、高岡、ドリフターズかなんかをかける。 |
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高岡 | いい? |
石川 | はい…。。 |
ちょっとの間。 |
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高岡 | あ、そうそう、ビール。 |
と、高岡、冷蔵庫へビールを取りに行く。 |
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石川 | あ、よかった。言うの忘れてたから。 |
高岡 | もちろんだよ。だって鍋だものな。えっと……グラス…グラス…。 |
石川 | 何かね。昨日、鍋にしようって電話で行ったの失敗したって思ってたんだよ。 |
高岡 | もどって来ながら)え、どうして。 |
500mlの缶ビールのプルトップの音。 「プシュ」 高岡、1つ目のグラスにビールを注いでいる。 |
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石川 | だってもう春だもんね。急に暖かくなっちゃたでしょ?だから。 |
高岡 | ああ、何だそんなことか。ほい。 |
グラスを石川の前に置く音。 |
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石川 | あ、ありがとう。 |
高岡 | (2つ目のグラスに注ぎつつ)いや、でもいいんじゃないか?何か鍋って |
石川 | あ、そう? |
高岡 | うん。……いやうちさ、うちの家ね。 |
石川 | うん。 |
高岡 | こういうことなかったんだな。 |
石川 | こういうこと? |
高岡 | だから鍋とかな…。自営業だろ? |
石川 | ああ、印刷屋さん。 |
高岡 | うん。店が家と離れてたし、それに…なんかおやじもおふくろも忙しくてさ。 |
石川 | ああ…。 |
高岡 | だから…いや鍋には、何か憧れがあるんだよ。 |
石川 | …そっか……。 |
一瞬の間。 |
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高岡 | あれ、暗くなった? |
石川 | ううん。 |
高岡 | いや、うちは家族みんな仲いいよ。 |
石川 | うん。 |
高岡 | 今度、紹介するな。 |
石川 | え…?。 |
高岡 | よーし。どうやら鍋も煮えてきましたぞ。食べますかな。今期最期の鍋。 |
石川 | はいな。。 |
高岡 | お、その前に。 |
石川 | あ、うん。 |
二人、グラスを持った。 |
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二人 かんぱーい。 |
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グラスが触れあった。 鍋のふたがとられた。 すごい量の鍋。 |
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高岡 | おおう…しまったな、あの甘いパンさえ食べなければ…… |
石川 | (笑う) |
音楽が部屋を包んだ。 |
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おしまい |