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【コラージュ1(僕の一日のはじまり)】 |
M |
僕はどこにゆくんだろう―――― |
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サンドストーム、激しく |
M |
めくれかけた唇の皮を、なんとなくなめる。
外では、ずいぶん昔から続いているサンドストームが
今日も変わらず吹き荒れている。
窓から見えるものといえば、
幾重にもたたみかける砂の風、
黄色い視界、
ぶあつい大地。
それだけ。 ここは、そういう世界。
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M |
僕は天体望遠鏡をのぞくのが、好き。
ザラザラとした黄色い空間が、丸いフレーム一杯に広がる。
ほら、まるでこの世界は、頑丈でうすっぺらな
黄色いカラでくるまれた、大きな卵だ。
深く、しんとした宇宙にぽっかりと浮いている、大きな卵。
その中で僕の一日ははじまり、で、終わっていく。
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電波をチューニングする音、ノイズ、ノイズ
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M |
僕の日課。ここではないドコかに向かって、電波を送る。
それは僕の言葉を連れて、サンドストームをくぐりぬけ、
暗い空へとダイブする。
そんで目をつぶるんだ。
きっとその時僕は、宇宙にいる。
何にもなしのあそこに漂っている。
ここではないドコかに向かって漂っている。
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【コラージュ2(コラージュ)】 |
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電波をチューニングする音、ノイズ、ノイズ
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M |
アロー… アロー… 聞こえますか… アロー… …アロー…
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チューニング、ノイズ、サンドストーム |
M |
アロー、ハウアウユウ、聞こえますか… 聞こえますか…
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F |
………アロー……… 居心地はいかが? |
M |
えっ? |
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ザーッというノイズ音 |
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「おはようございます」 |
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「おはようございます、うわー、めっちゃキンチョーするわ」
(ノイズ音)
「あー、もしもし?あのー、ちょっとおくれます。すいません、
はい、じゃ」
(ノイズ音)
「(時報の音)」
(ノイズ音)
「おばあちゃん」
(ノイズ音)
「(野球のナイターの音)」
(ノイズ音)
「えーと、この前、映画の撮影でホンコンに行ってきたんですけども」
(ノイズ音)
「ギャハハハハハー」
(ノイズ音)
「私、子供のころ、タバコのフィルター集めんのシュミやったんですよー」
(ノイズ音)
「0・件デス」
(ノイズ音)
「ゴキブリ?」
(ノイズ音)
「ギャハハハハハー」
(ノイズ音)
「(ひぐらしの声)」
(ノイズ音)
「このあと、10時50分から!」
「プリーズ、リッスン!!」
(ノイズ音)
あなたはドコにゆくの?
(ノイズ音)
あれ?
(ノイズ音)
あれ?
(ノイズ音)
あれ?
(ノイズ音)
「お待たせしましたぁ、んじゃどっから行きますか」
(ノイズ音)
「どこから行きましょう?」
「いや、どこから行くというよりも、じゃ、どこかに行きましょうか?」
(ノイズ音)
「どっかに行きますか?」
「どこにします?」
「どこでもいいです」
「でも…」
ドコかってどこ?――――
(ノイズ音) |
F |
あなたはドコにゆくの? |
M |
どこにもいかないよ。 |
F |
いいえ。いつかはドコかに行かなければ。卵はずっと卵のままでは
いられないもの。 |
M |
だったら、僕はどこにゆくんだろう。 |
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【コラージュ3(僕の一日のはじまり)】 |
M |
そしてサンドストームが終わり、天体望遠鏡で僕は君を
探しはじめる。けど、そこにはやっぱり何もなくて、ただ
小さなカケラがたくさん浮いていた。
真っ暗な空にチラチラと光る、あれは、何?
僕はずいぶん長いこと考えて、ハッとする。
そっか。そういうことか。そうだったんだ。
君も、君の体も、君の言葉も、そこにあるんだろう?
小さなカケラになって、そこにいるんだろう?
ここではないドコかは、ソコにもココにもアソコにもドコにでも
あるって、そういうことなんだろう?
卵のカラはひびわれてはがれおち、足もとに降りつもる。
それをそっとふみしめて、小さな乾いたその音を、なつかしいと
ふと感じた。 |
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僕は、ゆるやかに走り出す。鼓動の脈打つ、そのスピードで。
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