第197話 (2000/01/07 ON AIR) | ||
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『太陽がいっぱい』 | 作:深津 篤史 |
風の音がきこえる | |
女 | 年賀状、きてるわよ。 |
男 | ああ、うん。 |
女 | 2つ目が上がったところ? |
男 |
そうだな |
女 |
おモチ2つ?3つ? |
男 |
今日はミソだっけ |
女 |
ええ |
男 |
じゃあ3つ |
女 |
明日はお澄ましですからね |
男 |
カマボコ届いたっけ |
女 |
はい |
男 |
じゃ明日も3つ |
女 |
良かったわね、まにあって |
男 |
しかし、あいつも船の中で正月じゃな |
女 |
元旦ぐらいこっちでゆっくりしてけば良かったのに |
男 |
ま、そうもいかんだろ。他による所もあるだろうし |
女 |
新聞きてるけど読む? |
男 |
ちゃんとしたやつ? |
女 |
ええ、広告のたくさん入った |
男 |
科学の進歩はすごいね、しかし |
女 |
電子メールばっかりじゃさびしいもの |
男 |
最初は手間がかかるだけだと思ってたんだがな |
女 |
あっちじゃレトロブームだそうですよ、90年代の |
男 |
ありがたいね、なつかしい話だよ |
女 |
あ、そうだ |
男 |
何だ |
女 |
まだ言ってなかったわよね、新年のごあいさつ |
男 |
ああ、うん |
女 |
あけましておめでとうございます |
男 |
いや、うん、あけましておめでとう |
女 |
なんだかね |
男 |
夜がないというのも、区切りがつかんでいかんな |
女 |
もうなれました |
男 |
まあ、いかし、晴れて良かった |
女 |
ええ |
男 |
正月はやはり晴れんとな |
女 |
日本晴れですか |
男 |
俺の実家が鳥取にあってな |
女 |
またその話ですか |
男 |
砂丘の向こうに海がある。赤くそめて初日の出があがる。 |
女 |
はい |
男 |
帰りたいなあ |
女 |
あと一年のしんぼうですよ |
男 |
まあ、戻ったところで何もかも変わってるんだろうが |
女 |
ええ |
男 |
海がないのが惜しい所だ |
女 |
ほんと見渡す限り |
男 |
青い砂というのもな |
女 |
見ようによっちゃあ海にみえますよ |
男 |
去年の正月もこんな話したな |
女 |
ええ |
男 |
ケンジも一緒だった |
女 |
今頃は船の中ですよ |
男 |
今年は嫁さんでも連れてくるかと思ったら |
女 |
あら |
男 |
何だ |
女 |
結局、うち明けずじまいなのね、あの子ったら |
男 |
何だ何だ |
女 |
向こうにいい人できたそうよ |
男 |
そうか |
女 |
こういう仕事してるから、いつダメになるかわからないし
|
男 |
(笑って)情けない奴だな |
女 |
来年のお正月に期待しましょ |
男 |
ああ、うん |
女 |
そろそろおせちにします? |
男 |
いや、もう少し |
女 |
ええ |
男 |
ほら |
女 |
3つ目 |
男 |
うん |
女 |
私子供の頃、おねぼうさんでね |
男 |
(少し笑って)ああ |
女 |
ここだとその心配がなくていいわね |
男 |
初日の出も、3度登って3倍めでたい |
女 |
ええ |
男 |
ま、要は気の持ちようだ |
女 |
去年もそう言ってたわよ |
男 |
ああ |
女 |
そろそろ食べましょ、四つ目があがるまでまってたら
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了
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